
恋歌 七歌人

藤原定家
ふじわらのていか
97首
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身もこがれつつ
松帆の浦の夕なぎの時に焼いている藻塩のように、私の身は来てはくれない人を想って、恋い焦がれているのです。


式子内親王
しきしないしんのう
89首
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの よわりもぞする
我が命よ、絶えてしまうのなら絶えてしまえ。このまま生き長らえていると、堪え忍ぶ心が弱ってしまうと困るから。


藤原義孝
ふじわらのよしたか
50首
君がため 惜しからざりし 命さへ
ながくもがなと 思ひけるかな
あなたのためなら、捨てても惜しくはないと思っていた命でさえ、逢瀬を遂げた今となっては、(あなたと逢うために)できるだけ長くありたいと思うようになりました。


藤原兼輔
ふじわらのかねすけ
27首
みかの原 わきて流るる 泉川
いつ見きとてか 恋しかるらむ
みかの原から湧き出て、原を二分するようにして流れる泉川ではないが、いったいいつ逢ったといって、こんなに恋しいのだろうか。(一度も逢ったことがないのに)



和泉式部
いずみしきぶ
56首
あらざらむ この世の外の 思ひ出に
今ひとたびの 逢ふこともがな
もうすぐ私は死んでしまうでしょう。あの世へ持っていく思い出として、今もう一度だけお会いしたいものです。


柿本人麻呂
かきのもとのひとまろ
3首
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の
長々し夜を ひとりかも寝む
山鳥の尾の、長く長く垂れ下がった尾っぽのように長い夜を(想い人にも逢えないで)独りさびしく寝ることだろうか。



壬生忠岑
みぶのただみね
30首
有明の つれなく見えし 別れより
暁ばかり 憂きものはなし
有明の月は冷ややかでそっけなく見えた。相手の女にも冷たく帰りをせかされた。その時から私には、夜明け前の暁ほど憂鬱で辛く感じる時はないのだ。

