うたあわせプロジェクト vol.08 第54首 儀同三司母【新古今集】

こんにちは、おもいびとの“やよい”です。

vol.08で紹介するのは、平安時代の恋愛観が伺えるストレートな歌です。


第54首 儀同三司母(ぎどうさんしのはは)生年不祥~996【新古今集


『忘れじの 行く末(ゆくすゑ)までは かたければ 今日(けふ)を限りの 命ともがな』







【歌の意味】

「いつまでも忘れない」という言葉が、遠い将来まで変わらないというのは難しいでしょう。だから、その言葉を聞いた今日を限りに命が尽きてしまえばいいのに。


詞書には「夫であった時の関白・道隆が夫として作者の家に通いはじめた頃に歌った歌」とあり、新婚ほやほやの妻が一番幸せな時期に読まれたもののようです。平安時代の貴族の夫婦生活は一夫多妻制で、結婚当初は男性が女性の家へ通ってくる「通い婚」が慣習でした。当時の女性は待つことしかできず、男が来なくなり子もなければ生活できないかもしれない環境にありました。

またこの歌は、技巧を好んだ新古今集の中には珍しいほど技巧をこらさず、素直に自分の想いを描いた歌です。後世の歌人たちは、この歌を「くれぐれ優しき歌の体(ほんとうに優しい歌だ)」と評価しました。

【作者の説明】

高階貴子(たかしなのたかこ)。高内侍(こうのないし)とも呼ばれました。

和歌をよくし、漢詩文にも優れていたそう。

中関白藤原道隆(なかのかんぱくふじわらのみちたか)の妻となり、儀同三司伊周(これちか)や一条天皇の后・定子(ていし)を生みました。儀同三司は准大臣のことで、三司(太政大臣・左大臣・右大臣)と儀が同じという意味です。

中関白とは、道隆の父・兼家(かねいえ)も弟の道兼(みちかね)も関白になったことによる呼び名です。



この歌を初めて読んだとき、素直で美しい歌だなと感じたのを覚えています。

「幸せな状態が永遠に続くように、今命がつきればいいのに」という意味から、よほど幸せな時間を過ごしていたのでしょう。ここまで考えられるほど幸せだったのかと思うと、羨ましくも思います。

現代では愛が重いと捉えられてしまうかもしれませんが…。

そんな一途がゆえの素直な思いを、現代の恋愛観にリンクさせるように描いてみました。

特にこだわったのは「表情」です。見る方それぞれの思い出に重ねるように鑑賞していただければ、より楽しんでいただけるのではないでしょうか。


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